コースに関係するいくつかの言葉の説明である。
しばらくの間大変よく使われるようになった言葉のこと。例えば技術的な文脈でよく使われる。しかし定義が曖昧だったりする場合がある。大まかに鍵となる概念を説明したり、流行している(技術的な)大体の方向性を表すために使われたりする。以下ではバズワード的な用語には*を記している。
(キリスト教における神の遍在のように)計算機が環境に溶け込み、あらゆる場所でいつでも計算機を使える状態になっていることを表す。他のユビキタスで始まるバズワードの元になったバズワードである。Mark Weiserが提唱した(1988年頃)。類似用語としてアンビエント・エレクトロニクスがある。坂村健提唱のTRONプロジェクトにおけるHFDS(Highly Functionally Distributed System、超機能分散システム、この名称を与えたのは1984年より後かもしれない)の概念の方が早いと考えられる(1984年。http://type.jp/et/log/article/tron_iot)。ユビキタスという言葉はキリスト教の神学的文脈で使われるもので、こちらの方が欧米社会では受け入れやすかった可能性がある。 実際、ほとんど同じことを表す概念でも名前のつけ方で普及しやすさが異なる場合がある。日本流には八百万計算環境(八百万コンピューティング)或いは(若干悪い意味になってしまうかもしれないが)九十九計算環境(九十九(付喪)コンピューティング)とでも言うべきかもしれない(実際にやおよろずプロジェクトというものがあった。ただし概念的な差異があるかどうかは未確認)。付喪の方はユビキタスの意味ではなく、付喪神化<=>IoT機器がBUGやクラックなどの原因で怪しい動きをするようになることと定義すると従来からの意味とかなり近いかもしれない。
あらゆる場所で利用可能なネットワークのこと。ユビキタス・ネットワーク 野村総合研究所 (著) 2001/2 4889900950
色々なモノ(物)が接続され、互いに通信することで様々な機能を果たすネットワーク。Kevin Ashtonによる造語である。類似の(より広い範囲を包括する)用語としてIoE(Internet of Everything)がある。
従来型のインターネットは通信機器、携帯電話、PC、サーバから構成されている。それに対しIoTではモノとして各種センサ、アクチュエータ、組込みシステム、医療機器、トイレ、自動車、Webカメラ、照明機器や冷蔵庫などの家電製品、将来的には衣類、メガネ、本棚などの家具、ペットの首輪なども接続される(かもしれない)。IoTに接続されたモノのことをIoTデバイスと呼ぶ。ただしIoTデバイスと言う場合にはIPアドレスがなくてもRFIDタグが付いたモノやコンテンツのことも含める場合がある。
重要なのはモノがネットワークで繋がることそのものではなく、繋がったネットワークを利用すると、従来は不可能だった、様々な既存サービスや業務の効率化、問題解決、生活の変化、新サービス、新種のビジネスチャンスが生まれる、ということである。しかもその範囲は非常に広い。ネットワークにはもちろんモノだけではなく、AIやビッグデータの処理技術を含めたクラウド・サービスなども存在し、モノ以外にサービスも利用できる。単にモノをネットワークに接続すればIoTということではなく、そのことによってどのような問題解決、サービス、ビジネスが生まれるかに焦点を当てるべきである。
コンピュータ・ネットワークにおけるセキュリティの問題は、対症療法的な対策が多いように見受けられながらも或る程度対策が取られているが、IoTの場合には現状甚だ心許ない状況にあるようである。これはネットワーク技術者と工場などのセンサ・アクチュエータなどや組込みシステムを扱う技術者に重複がそれほどなく、技術文化的にかなり異なることに由来すると考えられる。ネットワーク技術者は教育の段階からネットワーク・セキュリティの重要性を学ぶが、現状のIoTデバイスやシステムの設計者は必ずしもそうではないと思われる。例えばある技術雑誌はIoT関連の特集に非常に積極的で参考になる記事を毎回載せていて、ある種IoTの牽引役をしている感があるが、IoTに付いてのセキュリティに関する記事はあまり見受けられない。工場ではクラックやウィルス感染により爆発や事故が発生し得るようにIoTではセキュリティ問題がより深刻になる場合があるので、今のままの状況が続くと由々しき事態である。